オランダ劇場正面。
オランダ劇場
Plantage Middenlaan 24 Amsterdam Holland
ナチスは、ユダヤ人を収容所へ移送する際、
彼らをいったんその地域の「集合地点」に集め、
そこから東方へと送り込んだ。
ヨーロッパの各地に存在するこうした場所の多くは、
この恐るべき歴史をとどめるための記念の場として残されている。
アムステルダムの南東地域は、かつてユダヤ人が多く住んでいた場所。
迫害の歴史を示す記念館やプレートが、あちこちに存在する。
そのうちの一つがHollandsch Schouwburg（オランダ劇場）だ。
同「記念館」で配布･販売されているリーフレットと小冊子から、
この劇場の歴史を紹介しよう。
オランダ劇場正面。
1892年から1941年まで、この劇場は地域住民にとって貴重な娯楽施設だった。
ところが、ナチ支配下において「ユダヤ劇場」と改称され、
演ずる人間も観客もユダヤ人に限定されるようになった。
ユダヤ人のパフォーマーたちにとっては、ここが唯一の活動場所となり、
一般のユダヤ人たちにとっても、入場が許される唯一の劇場となったのだ。
その後、1942年７月１８日のパフォーマンスを最後に、芝居は行なわれなくなる。
ナチスがこの劇場を、ユダヤ人移送のための「集合地点」と定めたのである。
客席は撤去され、
ホールには、収容所への移送を待つユダヤ人たちが集められた。
彼らはここからオランダ東部のWesterbork収容所へ送られ、
そこからさらに東方の「死の収容所」へと移送されている。
ユダヤ人たちがこの劇場で過ごすのは、1日程度。
翌日にはWesterborkに送られるケースが多かったとか。
ここが移送のための「集合地点」であることは公表されず、外部との接触は禁じられた。
集められたユダヤ人たち――子どもやお年寄りも――は、
劇場内部の暗闇の中で「運命」を待つしかなかったのである。
この劇場から移送された人数は6万人をくだらないという。
Hollandsche Schouwburgがモニュメントとされたのは、1962年。
アムステルダム市とユダヤ人コミュニティとの共同事業としてである。
建物の前面（ファサード）は1890年に作られたまま保存され、
客席と舞台があった場所には碑が建てられた。
1993年には劇場内部が補修･改修されて今日にいたっている。
かつて舞台だった場所には、碑が建てられている
劇場を入ってすぐ左には、壁にたくさんの名を刻んだ小さな部屋がある。
オランダから絶滅収容所、強制収容所へ送られて死んだ104000人のユダヤ人の、
6700の名(姓）が刻まれているのである。
[行き方]
田口の最新訪問日：00年2月15日
