資料
田中伸尚さんからのメッセージ
― 2001年9月11日の米国でのテロ関連 ―
昨日紹介した梶村太一郎さんのメッセージへの、田中伸尚さん（岩波新書『日の丸・君が代の戦後史』著者）の返信メッセージを、ご本人の許可を得て転載します。
田中さんは、この他にも「「報復するな」とアメリカに言うのが日本の歴史的知性だ」という手紙を首相官邸宛に送っています。
梶村さま
今回の事件は、 市民への暴力の連鎖を断ち切るにはどうすべきかを提起しているように思います。仰るように第一次大戦も第二次大戦も「一発」でした。三度、同じ轍を踏まない、踏ませないようにするには、市民として、どう考え、権力者にどう働きかけるべきか。
日本のメディアは「報復」当然です。ですが、アメリカ自身が、そして世界がアメリカに働きかけることは、リベンジが最下策、という「21世紀的事実」を伝え、諭すべきだと思います。「報復」は、さらなる暴力を生み、まさに暴力と憎悪の「悪の連鎖」に落ち込み、人びとを絶望の淵に連れていくことでしょう。「報復」を叫ぶ政治家やメディアには、明日が見えていない、人間の命が見えていないのではないか。
アメリカ的グローバリズム、アメリカ流の世界システムを転換しないかぎり、救いはないのではないでしょうか。アメリカにそれを気づかせるかどうかが、多数の市民の犠牲者を少しでも増やさない道だと思います。ですから、当面は、一人でも多くの命を救うことと、「報復するな」こそ、新たな道を切開く契機になるのではないかと思うのです。
私も城山三郎の書籍広告を見て、大兄とまったく同じ思いを求ました。だからこそ、この変わらぬ、地続き社会ではあっても、多数に与しない、国境なき市民の命とぴうところからの別の声を、さまざまなところから、政治の中枢部や社会に発していきたいと思います。
愚見でした。
９・１３
田中伸尚